エッセイ

ベテラン歯科医師のショート・エッセイ

永年、歯科医療に携わっているといろいろな症例に出合います。なかには「えっ! こんなこともあるんだ」なんてことも。歯や口腔だけでなく、全身の健康を考えるうえでもちょっと役立つことをまとめてみました。

雑貨扱いで輸入される歯科技工物

あなたのお口に入るかもしれない入れ歯も中国から輸入してるってご存じでしたか?

カドミウムやベリリウムなどの毒性が強い有害金属はの日本国内では使用が認められていませんが、海外では基準が異なります。実際、2008年に、中国製の義歯(入れ歯)から鉛が発見されるという事件がありました。それも「危険なレベル」だといいます。最初にアメリカで発見されましたが、実は日本でも中国製の義歯が使われているようです。

技工物は一度、口の中に入れたら数年、数十年と使うものです。本来であれば食品以上に安全・安心が求められるはずなのに、です。

日本には「歯科技工士法」という法律があり、歯科医師または歯科技工士でなければ義歯をつくることはできません。ところが、これはあくまで日本国内の話であって、海外での義歯製作は想定していません。

この問題が発覚して、日本の歯科技工士が「海外への義歯製作の委託禁止」を求めて東京地方裁判所に訴えました。しかし、東京地裁は「歯科技工士法は公衆衛生の保持を目的としたもので、個々の歯科技工士の利益を保護したものではない」(平成20年9月26日)として、訴えを退けました。

タカハシ歯科には4名のベテラン歯科技工士が常駐しており、私たち歯科医師とともに患者さまのお口の状態に合わせて義歯をつくっています。もちろん、材料は身体に害のないものを使用しています。「生産者の顔が見える野菜」がスーパーで売られるようになりましたが、タカハシ歯科は「製作者の顔が見える技工物」を提供していきます。

口は健康の入り口

タカハシ歯科では位相差顕微鏡を設置しております。

検査を受けた患者さんは、実際にご自分のお口に棲みつく細菌群(それも生きたまま動き回る)を目にされた事と思います。

歯ブラシで磨き残した食べかすは、口腔内細菌の温床となり、およそ24時間後には目に見えるほどのプラーク(歯垢)を生成していきます。

口腔内細菌は人間にとって常在菌なので、この菌を完全になくしたり、活動を止めたりする事は出来ません。

プラークの70~80%は細菌群で、虫歯や歯周病はプラーク内細菌の感染症なのです。ですから私達は、食べかす(菌の栄養源)と生成されてしまったプラークを取り除く事が、毎日、一生涯、大切な事なのです。

日本歯周病療法会では「歯周病の80%は、プラーク除去や歯石除去などの基本的口腔ケアで治る」と発表しています。

一般に難治である歯周病ですら生活習慣の原点が重要なのです。

さらに注目すべき事実として―

1、口腔清掃をきちんと行っている者の体内には日和見菌が適量だと報告されました。(※日和菌にはβ溶連菌・緑膿菌・肺炎菌・黄色ブドウ球菌・カンジダ等があります)

2、日和見菌は通常、人間の体内に棲みついており体外からの微生物を滅ぼし、古くなった成分を排出するという生体防衛の役割もあります。しかし、体力が低下するとちょっとした弱みにつけこんで必要以上に増加してしまうのです。

3、年齢を重ねると癌などで生命を失うよりも、むしろ増殖した日和見菌に感染した危険な状態になる事が多いとされています。(日和見菌数と口腔内細菌数は関連しています)

そこで現在、高齢者施設やICU医療の現場で、口腔ケアが非常に重要視されています。実際、口腔清掃をきちんと行う事で、感染症の罹患が著しく低下しています。

口の中を綺麗に保つ事は、虫歯や歯周病予防のみならず、口臭予防・日和見感染予防・味覚機能回復による食欲増進、そして体力充実と、まさに健康の源につながります。

タカハシ歯科の歯磨き指導を受けられた患者さんは口々に「今までいかに複雑な箇所でも大雑把にしか磨いていなかったか、自己流手入れの不潔さを自覚しました」とおっしゃられます。
そして一度、口の中のスッキリ感を体験されると、磨かずにはいられなくなるようです。

あなたもタカハシ歯科の正しい歯口清掃テクニックを早く身につけてください。